子供には必要な情報だけを伝える
子育てをしていて、微笑ましいと感じつつも苦労が多いのが意思疎通ですね。
子供は新生児の頃から既に人の言葉を認識していると言われていますが、1歳くらいまでに自分でも片言の言葉を話せるようになり、2歳頃にもなると自分から質問も頻繁に行うようになります。
褒めたり叱ったりといったしつけも、言葉が通じるようになるこの頃の年齢から開始することになりますが、大人がきちんと伝えたつもりの言葉が、子供には全く違った意味で伝わってしまうということがよくあります。
子供への意思疎通が難しい例の一つとして、保育園で行われた避難訓練での事例があります。
これは事前に避難訓練の前に「ハンカチを口にあてて、体を低くして庭に移動しましょう」といったことを指示していたところ、庭近くにいた子供が走って教室に戻っていくので保育士がどうしてそうしたのかと尋ねると「ハンカチが教室にあるから」と言ったという例です。
子供の発想は時に大人の常識を覆して驚くような発見をもたらしてくれるものですが、これは子供は大人のようにそれまでの経験による「般化」ができていないために言葉をそのままのとおりに受け取るからです。
「般化」とは心理学用語で、過去に経験をした複数のケースから事例を類型化し、別の場面で以前と同じ判断ができるようになるということです。
そもそも生まれてから経験をしたことが少ない子供にとっては、般化ができるほどの思考パターンがないため、言葉をそのままの通りでしか受け取ることができないか、わずかな経験の中からそれに近いものを選択するということしかできません。
ですので子供にものを伝えるときには、余計な情報を与えずにしてほしいことをダイレクトに伝えるようにすることが大切ですね。
理由や理屈はあとから理解しても十分です
子供と一緒に歩道を歩いているとき、自動車が来ることに注意をしてもらおうとして「道路側を歩くと自動車が近くに来て危ないからこちらに来なさい」といった言い方をする大人はよくいます。
こうした「○○という理由があるから☓☓しなさい」という言い方は、大人に対しての指示ならばよいのですが、子供にとっては情報量が多すぎて正しく意味を理解することができません。
子供への指示で大切なのは「車道から離れて歩きなさい」というだけのことなので、それ以外の理由や理屈は必要ではないのです。
子供が最も苦手とするのは「それ」「あっち」「さっきの」「ちょっとだけ」といった曖昧な指示語を含んだものの言い方ですね。
大人と子供は時間の感覚や距離感が全く異なりますので、大人同士で通じる内容も、曖昧な言葉を含んでいると子供へうまく伝えることができません。